10月1日に予定されているメルコホールディングスによるシマダヤのスピンオフ上場IPOが一部で注目されている。持っていないしこれから買う予定もないが今後のためにも今回のスピンオフ上場について自分なりに考察してみる。スピンオフ上場については初めて調べるので間違っている部分も多々あると思うので注意。
6676メルコホールディングス
PER | PBR | 利回り | 信用倍率 |
---|---|---|---|
16.4倍 | 0.87倍 | 2.73% | 306倍 |
時価総額 | 620億円 |
事業内容:Wi-Fi関連などPC周辺機器のバッファローを傘下。製麺のシマダヤはスピンオフ上場へ。
スピンオフ上場とは?
「スピンオフ上場」とは、ある企業が自社の一部事業を分離して独立した会社として新たに株式市場に上場させることを指します。このプロセスは、既存の株主にとって新しい株式を取得する機会となります。
今回のメルコホールディングスは食品事業であるシマダヤをスピンオフ上場させる。現在のメルコホールディングスの9月権利付き株主は10月1日のシマダヤ上場と共にシマダヤの株式を同じ株数自動的に手に入れることができるという理解。シマダヤ事業の分メルコホールディングスの株価は減額される。
シマダヤ株式の取得価格となる分配資産割合は0.275%。
例としてメルコホールディングスの株式を3290円で100株購入していた場合は3290x0.275の取得価格905円でシマダヤの株式を取得し、残りの2385円が新たなメルコホールディングスの取得価格となる。
メルコホールディングス(100株)を3290円で取得済み
↓
シマダヤ(100株)を905円で取得、新メルコホールディングス(100株)を2385円で取得したとなるような形。
現在の旧メルコホールディングスのバリュエーションがスピンオフ後のシマダヤと新メルコのバリュエーションの合計と比較して高いのか安いのか?を考えていきたいと思う。
業績予想
スピンオフ前とスピンオフ後のメルコホールディングスの25年3月期業績予想修正
シマダヤの25年3月期業績予想
シマダヤのスピンオフは3Qからなのでメルコホールディングスの修正予想にはシマダヤの1Q2Q分が含まれている。このままだとややこしいので手動で通期業績を2社で分解したのが以下である。
新メルコ+シマダヤ=旧メルコの期初予想となる。
これを踏まえた上で株価の算出方法は以下のようになる。
考えるべきは太字の部分である。上記はサンプルとして入力した数字だが現在のメルコホールディングスが割安か判断するためには①シマダヤの初値想定と②新メルコ(バッファロー)の株価想定を考える必要がある。
シマダヤ
まずはシマダヤについて見ていきたい。25年通期予想を分解すると以下のようになった。
1Qの時点で営業利益の進捗が約39%もあるのでパッと見で下期の予想がかなり保守的に映るが季節性があり業績は上期偏重とのこと。過去の決算(食品事業)をみても3Q4Qは営業利益が弱い傾向なので現在の通期予想が保守的すぎるという訳ではなさそうである。
・過去の四半期営業利益推移(食品=シマダヤ)
IPO仮条件の上限となっている1880円をそのまま適用すると予想PERは13.89倍。明確な比較対象となる企業がないので難しいが製麺ブランドとして一定のブランド力を確立している、原材料の小麦価格は足元で下落傾向などを踏まえると妥当と言える水準か?
ちなみに直近9月6日付の東海東京証券のレポートでは日清食品と東洋水産のPBRを参照にシマダヤの想定 PBR1.9 倍(24/3期実績 PBR、日清食品 2.3 倍、東洋水産 1.9 倍)としている。PBR1.9 倍と仮定するとシマダヤ の試算BPS1,052 円x1.9=1998.8円となる。
が、ここではとりあえずシマダヤの初値は仮条件の上限である1880円を想定としておきたい。
新メルコ(バッファロー)
現在のメルコホールディングスはシマダヤのスピンオフ後にはPC周辺機器として知名度もあるバッファローに社名を変更する模様。先ほどのシマダヤを除いた新メルコ(バッファロー)の決算予想をどう評価するか?
・過去の平均PER基準で評価する場合
シマダヤを含む旧メルコのヒストリカルPERは過去10年で約15倍。仮にこれをそのまま適用すると予想EPS97.55x15=1463円。シマダヤの想定価格と合わせて1463円+1880円=3343円で今現在の株価3660円は若干割高となってしまう。
・配当利回り基準で評価する場合
が、今期の配当を見ると中間と期末合わせて年間で実質80円である。(会社予想の年間配当100円のうち20円はシマダヤから受け取る中間配当)
これを基準に高配当の下値目安を5%とすると1600円。4%なら2000円。3%なら2400円。利回り5%超えはなかなかないと考えると1600円は堅い下値となるか?これを適用すると1600円+1880円=3480円となるがこれも現在の株価より若干割高水準となる。
・PBR基準で評価する場合
メルコホールディングスのPBRは過去3年 (36ヵ月) 平均 0.96倍 過去10年(120ヵ月)平均 1.15倍となっている。東海東京証券レポートでは新メルコ(バッファロー)のPBRを0.8倍と仮定している。おそらくこの数字は過去の平均PBRからシマダヤのPBRを1.9倍と仮定して差し引いた形?PBR0.8倍と仮定すると試算BPS2,775x0.8=2220円となる。これを適用すると2220円+1880円=4100円で現在の株価は割安となる。
・過去の業績推移
過去の業績推移を見ると巣ごもり需要のあった21年3月期と22年3月期が良かった。(IT関連)
営業利益の推移(IT関連=バッファロー)
地域別の売上はほぼ国内がメインで売上海外比率は数%(シマダヤも含む)
国内市場が売上のほとんどを占めているということで去年は円安による部品価格の高騰などで苦戦した模様だったが10月以降の価格改定や来年はwindows10サポート終了に伴うPCの買い替えサイクルの到来も期待されているので今後は挽回なるか?また、こちらもシマダヤと同じようにPC周辺機器としてのバッファローは国内で大きなブランドを確立している印象。これらの点は今後の評価に加えて良いかもしれない。
結論
過去のPER、PBRや配当利回り基準などで見て今現在のメルコホールディングスの株価が割安なのか割高なのか妥当なのか、バッファローとシマダヤどちらもメーカーとしての知名度ブランド力があり将来性を考えれば今は割安そうにも思える。知名度の低いメルコホールディングスという社名が今後は知名度のあるバッファローとシマダヤに変わるのでスピンオフ前に取得しておくという考え方も面白いかもしれない。また、自分にはまだよく理解できていないメリット、例えば将来的にバッファローとシマダヤを取得するより現在のメルコホールディングスを取得しておくことによる税制的なメリットなどもあるのだと思う。
個人的に今回メルコホールディングスには手を出さない予定だが、今後どうなるのか行く末を追っていきたい。
年間損益額と現在の評価損益状況
配当調整金が入って年間損益額は先週から若干プラス。
パニック売りはないが地合いは為替と連動し不安定。まだまだFOMC、日銀会合、自民党総裁選、大統領選といった重要イベントが続く。来年以降を考えたら安いと思える銘柄も色々あるが個人的には今は耐える局面だと思っている。万が一またパニック売りが来ても耐えられるように想定。四季報を読みつつチャンスを窺いたい。