最近以前から監視している1663K&Oエナジーと4107伊勢化学工業のヨウ素を生産している2社を分析している人をよく見かけるようになった。
来週26日に4107伊勢化学工業の決算が迫っているので自分もヨウ素銘柄2社について今まで調べたことをまとめておく。
ヨウ素とは?
ヨウ素についてはこちらの動画を参照して欲しい。
投資家目線でヨウ素を見たときの一番の特性は日本国内で原料の調達から加工まで完結できる唯一の天然資源ということ。日本はあらゆる天然資源の調達を海外に依存しているがヨウ素だけは違う。日本のヨウ素生産量は世界の約30%を占めていてチリが約60%以上。つまり日本とチリがほぼ独占状態にある。埋蔵量に関しては日本が圧倒的である。
株式投資のテーマとして今ヨウ素が注目されている主な理由は曲がる太陽電池でおなじみのペロブスカイト太陽電池の原料としてである。
そしてここ最近のヨウ素価格の高騰により上場しているヨウ素生産の1663K&Oエナジーと4107伊勢化学工業の業績推移は好調である。ペロブスカイト太陽電池への思惑及びヨウ素価格の高騰で私のようにこの2社を追っている人は意外といると思う。
しかし近年ヨウ素の価格を押し上げている理由はペロブスカイト太陽電池の普及拡大思惑ではなく世界的な造影剤などの実需増加であると思う。
ペロブスカイト太陽電池の今後の開発普及スピードと規模感によるが実際ペロブスカイト太陽電池用途でのヨウ素の必要量は現在の生産量の1%に満たないという見立てもある。ただしこれは国内限定で適当に見積もった話みたいなので世界含めた正確な需要予測は難しいと思うがそれほど急速なインパクトはなさそうに思える。
ヨウ素は天然資源なので生産できるペースにも限りがあり原料であるかん水の採取量も国によって規制されている。実際東日本大震災の時も地盤沈下の影響で生産が一時ストップされた。その時にもヨウ素価格は跳ね上がっている。そのため今後旺盛な需要が見込めるからと言って生産量を急速に増やすのは不可能である。生産量を急速に増やせないというのはチリも同様で現在のところヨウ素に代替できる資源も少なくそれらが最近の価格上昇要因になっているのだと思う。
ここからは個別の銘柄分析に入る。
セグメント構成
K&Oエナジー
伊勢化学工業
K&Oエナジーは天然ガスの売上がメインでヨウ素は売上比率が低い。しかし近年の価格高騰で去年は利益率の約半分を占めている。
伊勢化学工業はヨウ素及び天然ガスとなっているがKOエナジーとは逆で天然ガスがおまけで売上利益比率はヨウ素が9割、天然ガスが1割くらいとの事。また、ヨウ素以外の金属化合物も手掛けていてこちらは将来需要を見込んで設備拡大中。
年間のヨウ素販売量、生産量
K&Oエナジーは年間販売量が約1700トン。
伊勢化学工業は開示はしていないが以前IRに聞いた時の回答は生産量はだいたい年間約2000から2500トンとの事。ヨウ素の生産量に関しては伊勢化学の方が若干多い。
現在の時価総額は株探だとK&Oエナジーが688億で伊勢化学工業が424億。ヨウ素に関して言えば伊勢化学の方が生産量は多いがK&Oエナジーは天然ガス事業の規模が大きいのでそれが利益差となっていると思う。
最近のヨウ素事業の利益推移比較
ヨウ素は貿易統計と生産動態統計が公表されているのでそれらの数字も合わせてグラフに表した。
2023年の7-9は9月はまだ発表されていないので8月まで。販売単価は上がり続けているし全体販売価格も円安の影響もあり上昇傾向にある。9月分の発表はまだだが円安も継続しているのでおそらく販売単価は9月も強いと思っている。
特にK&Oエナジーの売上利益推移と輸出統計の金額に相関性がある。一方で伊勢化学工業はあまり相関性が見られない。これは輸出比率がK&Oエナジーが7割を超えているのに対し伊勢化学工業は国内販売比率が多く輸出比率は半分程度である事に起因していると思われる。また、伊勢化学工業はAGCが親会社で特定の国内大口取引先もあるので生産量は上だが価格転嫁の面でK&Oエナジーよりも劣っているのかもしれない。いずれにしろ統計の数字から定量分析しやすいのはK&Oエナジーであると思う。
統計を見る限り現在公表している通期の業績予想はどちらも保守的に思える。7-9月も円安で推移したことにより今の通期予想からの上振れはどちらも期待できると思う。
今の株価をどう評価すべきか?
ここからが本当に主張したい部分である。では今の株価評価は低いのか?と問われると本当に難しい。ここ最近地合いが不安定なのもあるが過去のPERがこのくらいで推移していたから仮に上方修正がでたら最低限これくらい評価されなければおかしいとも言えなくなってきた。
K&Oエナジーは前回の決算発表で上方修正を出したが決算発表の翌日はギャップアップからの寄り天で一気に売られた。これはおそらく私を含め好決算発表を予測してそれを狙ったプレイヤーが増えたからだと思っている。
1663K&Oエナジー
セクターは全く違うが同じように7839SHOEIという高級ヘルメットメーカーも好決算を発表した決算日翌日は大幅ギャップアップスタートから寄り天になりなんと今日まで下げ続けている。私はやっていないがこの銘柄もヘルメットという単一性により輸出統計から業績予想がしやすかったからだと思う。
7839SHOEI
もちろん下落し続けている理由はこれだけではないと思うが、最近のこういった現象は輸出統計など定量データを使って業績予測を活用するようになった私を含む個人プレイヤーが増えていることにより起きているのだと思う。株式投資というゲームには全員が全員同じような手法を使いだしたらそれはすぐに通用しなくなるというの特性があるのだろう。これから個人がどんどん株式投資にあらゆるデータを活用できるようになっていき益々厳しいゲームになっていくのかもしれない。最近は各地で投資勉強会や配信も活発になりあらゆる手法や隠れ的な銘柄も共有されやすい傾向にある。だからこそあえて孤独に徹するべき時間も大切なのではないかと最近思う。ここ最近の相場にやられて頭がおかしくなっているので変な事を書いてしまっているかもしれない。